「ラクして儲ける方法」という商材をロジカルに検証してみる

2014年11月03日 12:33

「ラクして儲けるネット副業」「ラクして儲けるバイト」「ラクして儲ける情報商材」……など等、インターネット上には、各種各様の「ラクして儲ける方法」が見られます。「ラクして儲ける方法」を考える場合、「ラクして」というキーワードには注意すべきですね。何と比較して「ラク」だと表現するのかを、しっかりと把握しないと騙される可能性が高いからです。

確かに、私は「10年前」と比較するとラクをしています。労働時間も労働環境も、比較にならないほど良くなりました。多くの人に支えられて今があります。しかし10年の道程がラクなものであったかというと、わかりません。かなりのストレスを抱えながら試行錯誤を繰り返してきた、ようにも思います。

多くの場合、「ラクして儲ける」という表現を聞くと、いくらなんでも10年以上も試行錯誤を繰り返してから到達するとは受け止めないでしょう。「ラクして儲ける」ということは、「コストをかけずに儲ける」と表現を変えることができます。そのコストとは、「お金」「時間」「労力」。つまり、手元資金がなくても、短期間で、簡単に儲ける、ということなのです。

ここで「ラクして儲ける」のフレーズに、足りない部分があることを見逃してはいけません。

● 「誰でも」ラクして儲けることができるのか?

● ラクして「大金」を儲けることができるのか?

の2つです。まず前者の「誰でも」を実現するためには「創意工夫しなくても」という言い方に変換することができます。教えられた方法のとおりにやれば確実に儲かる、ということです。つまり「自動化」されていないと意味がありません。お客様や従業員との関係をマネジメントしなければならない場合、想定外のことが連続しておきます。創意工夫なくして、何事も成し遂げられません。この時点で、お客様を対象とした事業はすべて除外されます。

後者の「大金」なのかということも重要です。その手法を手に入れるのに10万円を支払っているのに「ラクして儲ける」額が1万円では意味がありません。(実際にこういうことがあります)

「大金」と表現するからには「1億円」ぐらいの数字を考えたいですね。ただ、何らかの事業をスタートさせ「1億円」の売上を作るのにはそれほど大変ではないかもしれません。しかし、この「ラクして儲ける方法」を知りたがっている人の多くは、自分の懐に「1億円」を入れたいのだと考えます。

そこで自分の懐に「1億円」を入れるのに、通常どれぐらいかかるのか? 調べてみます。高卒男子の生涯年収は「2億4000万円」。高卒女子は「1億8000万円」。大卒男子は「2億8000万円」。大卒女子は「2億4000万円」です。(いずれも、転職をせずに同一企業で定年まで勤務した場合の数字)

(※ 統計元:独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2013』)

当然、尻上がりに年収が増えていくと考えますから、1億円を儲けるのに通常は20年以上はかかると計算できます。通常20年以上かかるものを、どれぐらいに短縮すれば「ラクして儲ける」ことになるのでしょうか。10年でも長い気がしますね。5年ではいかがでしょうか。2~3年で実現すると、確かに「ラクして儲ける」と表現してもよいかもしれません。

手元資金はどれぐらいが妥当でしょうか。100万円だと多い気がしますね。お金に対する感覚は個人差が大きいため難しいですが、「ラクして儲ける」という表現には当てはまらないと考えました。ですから10万円以下と設定しましょうか。10万円も出したくない、という人もいるかもしれませんが、一応基準として「10万円以下」とします。

また、労力というコストをかけないという表現も曲者です。「ラクして儲ける方法」という商材を10万円ぐらいで買ったとします。段ボール箱に、200ページの資料と、DVDが10枚同梱されていて、これらのノウハウすべて頭に入れて、そこに書かれたとおりのことをすれば、あなたも2~3年で1億円以上稼げます、と言われても、ちょっと面倒くさいですよね。資料をぱらぱらっとめくったら、専門用語がたくさん書いてあると読む気がしなくなるでしょう。

実際に、このような情報商材を購入する80%以上の人が、商品を購入するだけで手法どおりに行動をスタートさせていないと言われます。また、残りの20%の人も、ほとんどがマニュアルをすべて読まずに始めてしまう(見切り発車)ため、ほぼすべての人が、うまくいくものもうまくいきません。他の人はともかく、そこまでしなくても自分なら成功できる、という思い込みーー「自信過剰バイアス」にかかっている人も多く、かなり労力コストを落とさない限り「誰でもラクして儲ける」ことは実現されません。それでは、どれぐらいの労力なら、すべての人がその手法を実現させられるでしょうか。

前述したとおり、お客様を対象とした事業はすべて除外すると書きました。どんな事業をやるにしても、多少の想定外のことは覚悟しなければなりません。ここにかける「労力コスト」はけっこう大きなものです。サラリーマンのように事業会社に所属しているのなら、そのコストは小さなものとなりますが、事業主になる以上は、それなりのリスクは覚悟しておいたほうがよいでしょう。事業をせずに大金を手に入れたいと考えると、多くの場合は「投資」という選択肢が頭に浮かびます。

ここまでを整理すると、誰でも、お金をかけず、短い時間で、苦労もせず、大金を儲ける方法は……

手元資金が10万円以下で、2~3年以内に、1億円以上を、ほぼ何も工夫することなく、自動的に、自分の懐に入れるような投資方法があれば、「ラクして儲ける方法」と言えるかもしれません。

うーん……。そのような方法は存在しない、気がしますね。どうしてもひっかかるのが「労力」です。「労力コスト」をかけたくないという欲求を満たすような「ラクして儲ける方法」は実はほとんど存在しないと考えていいでしょう。

もっと言うと、一般的な事業会社で働く以上の「労力コスト」はかかると考えて間違いありません。ということは、普通のサラリーマンが味わうより2~3倍の労苦をも気にしない「ストレス耐性」があれば、このような「ラクして儲ける方法」は実現可能と思います。この結論を出した時点で「ラクして儲ける」という表現から、かなり矛盾していると思いますが。

横山 信弘

経営コンサルタント

現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。「絶対達成する部下の育て方」「絶対達成マインドのつくり方」「営業目標を絶対達成する」など、「絶対達成」シリーズの著者。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は「空気で人を動かす」。